リンクがなければ,ウェブというものは存在しない。人間が生きるのに食事をすることとおんなじ。それ自体に,罪もなければ,罰もない。当たり前のこと。
3月30日に大阪地裁で下されたFLマスク裁判の有罪判決中の,「法に触れるようなサイトにリンクをはった場合,犯罪の幇助となる」とした点で,賛否両論が巻き起こっている。これは,リンク先サイトが違法な行為をしている(あるいは助長している)と知ってリンクした場合はもちろん,知らずにリンクした場合でも,「犯罪の幇助」に問われる可能性も出てくる(Mainichi INTERACTIVEの判決要旨全文)。
ウェブというのはリンクによって成り立っている。まったくリンクのないページというのは,存在意義がない,と云っていい。ウェブとはそもそも,そういうものだ。関連記事へのリンク,相関関係にある記事へのリンク,情報ソースへのリンク,または反論記事へのリンク,補足情報へのリンク,また注目に値する情報へのリンク…。学内研究論文などがおのおのリンクしながら発展し,多くの人が集い,多くの人がつながり,多くの情報が補完しあい,補充しあい,形作られている。そこにそもそも,違法なリンク,なんてものは存在しようがない。それは,ウェブにとっては,自己否定とも云える。
よく云われることだが,なら,ロボット型のサーチエンジンは,違法性が高い。著作権を侵害しているMP3が欲しいと思って,それっぽいキーワードで検索すれば,グーやインフォシークなどでたどり着ける。それらを総ざらいするマックOSのシャーロックも,違法ツールとなろう。もしそうなら,グーやインフォシークは,すべての登録サイトを公開する前にチェックする義務が生じるし,それができなければそのサービス自体,違法行為となろう。基本的な意義を知らぬまま判決を出す司法,「安易なリンクを慎むべき」なんて記事を書く頭の悪い記者,そんな者たちに振り回されてはいけない。
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